プロデザイナーとのポスター制作プロジェクト - CGKインターナショナルスクール小学生の国語授業紹介
今年のCGK School Festival 2024のポスター制作は、初等部4、5年生クラスの子供たちが担当しました。5年生が主導的な役割を果たし、デザイナーとの直接のやり取りから発注、完成までの全過程を担当しました。一方、4年生は来年に向けた準備として、自分たちのアイデアを形にする練習に取り組みました。
このプロジェクトには2つの狙いがありました。
- 子供たちに社会の仕組みをより深く知ってもらうこと
- プロの専門家と協力して質の高い成果物を作り上げる経験を提供すること
これは実社会での経済活動を模した取り組みであり、同時に職業体験の要素も含んでいます。
ポスター制作は以下の段階を経て進められました。
発注の概念理解
まず、子供たちは「発注とは何か」という基本的な概念から学び始めました。ポスターのターゲット層、School Festival開催の目的・理由、ポスターに掲載すべき情報についても深く話し合いました。この過程で、保護者、学校、学生、コミュニティなど、様々な視点からSchool Festivalの意義と宣伝ポスターの重要性について考察しました。
キャッチコピーの創作
次に、ポスターで伝えたいメッセージやCGK School Festivalの魅力を凝縮したキャッチコピーの作成に取り組みました。ターゲット層を意識しながら、魅力的な言葉やメッセージを組み合わせる作業は、子供たちの語彙力とコミュニケーション能力の向上にも大きく貢献しました。子供たちは言葉の力と影響力を実感し、創造性を存分に発揮しました。また、グループでのブレインストーミングを通じて、多様な視点の重要性にも気づきました。
このキャッチコピー作成の経験は、子供たちに広告やマーケティングの世界への興味を芽生えさせたようでした。さらに、自分たちの言葉でイベントの魅力を表現することで、CGK School Festivalへの愛着と誇りも一層深まりました。
発注依頼書の作成
キャッチコピー作成を通してポスターの方向性を決めた子供たちは、デザイナーとのミーティングに向けて、発注依頼書の作成に取りかかりました。
下記の内容を全てグループメンバーで話し合って決め、依頼書を完成させました。
- ラフ案
- テキスト原稿
- 使用素材、写真
- デザインイメージ
実際のビジネスプロセスを体験し、同時に専門用語も学びながら取り組みました。この過程を通じて、子供たちはチームワークの重要性を学ぶと共に、クリエイティブな思考力や意思決定能力を養いました。また、実際のビジネス現場で使用される発注依頼書の作成を通じて、プロジェクト管理の基礎も体験することができました。この経験は、将来の職業選択や起業への興味を喚起する貴重な機会となりました。
デザイナーとのミーティング(発注依頼・校正戻し)
発注依頼は、実際にデザイナーと会いながら、各グループのアイデアや方向性について直接プレゼンをしました。単に依頼書の内容を読み上げるだけでなく、わかりやすい言葉で理由や思いを伝えることを心がけました。プレゼン後は、プロの視点の意見を伺いながら、自分たちのアイデアが形になるよう多くの時間をかけて話し合いました。
デザイナーから4種類の初期デザイン案が提出された後、子供たちは2回目のミーティング(校正戻し)に向けて準備を行いました。インクルーシブな姿勢を保ち、子供たち自ら必要に応じて英訳をしながらその場にいる全員が内容を理解できているのかを確認して話し合いを進める姿勢も見受けられました。
校正戻しのミーティングでは、子供たちはきめ細かく、様々な視点から修正点を提案し、丁寧に意見を述べました。修正版が次の日に早速届き、子供たちはプロの素早い制作ぶりに驚きつつ、自分たちのアイデアがポスターとして完成に近づいていることに大いに興奮している様子でした。
ミーティング中、一人の女の子が「下にグラデーションを入れるのがいいと思う」と主張しました。その場では実際のイメージがつかめなかったクラスメイトたちも、修正版を見て「グラデーションがある方がすばらしい!」と反応していました。最後まで子供たちが悩んだのはフォントでした。丸みのある柔らかな印象にするか、ゴシック体のような角ばった印象にするかを検討し続けました。全体の雰囲気、自分たちのキャッチフレーズ、ターゲット層など様々な要素を考慮した末、最終的に角ばった字体に決めました。このように一人一人の意見や想いが集まり、最終版が完成しました。
振り返り・配置場所の検討
このプロジェクトの振り返りでは、デザイナーから学んだことや、プロジェクトを通して感じたこと、完成したポスターへの思い、今後の挑戦したいことなどを、構成と段落に気をつけながら素直に書きまとめていきました。デザイナーへの感謝の気持ちを表したり、デザイナーを目指すためのスキルについて言及する子もいました。
また、子供たち自身がポスターを使って宣伝活動を行うことにもなりました。店舗に直接訪問し、ポスター掲示の協力を求める活動です。このプロジェクトはホームルームで行っているビジネスUOIとも関連しており、ポスター制作の目的を振り返るとともに「宣伝」の重要性を改めて学びました。
このプロジェクトを通じて、子供たちは情報収集と整理能力、レイアウトとデザイン思考、効果的な言葉選びと創作力、グループワークとコンセンサス形成能力、そしてプロとのコミュニケーション能力など、多岐にわたるスキルを向上させる貴重な機会を得た様子でした。
このように、「CGK School Festival 2024のポスター制作プロジェクト」は、単なる学校行事の準備にとどまらず、子供たちに実社会での経験と多様なスキルの習得機会を提供する、教育的価値の高い取り組みとなりました。 最終的に完成したポスターは、子供たちの創造性と実行力を存分に発揮した力作となり、学校と地域のつながりを深める役割を果たすことでしょう。
※このポスター(A2サイズ)やチラシ(同デザイン/A4サイズ)の掲出にご協力頂ける企業・団体・個人の方がいらっしゃいましたら、ご連絡頂けますと幸いです。
理事長後記
本プロジェクトにご協力いただいたプロデザイナー
鈴木章宏
グラフィック・デザイナー
1991年に日本デザイン専門学校(現 日本デザイン福祉専門学校)を卒業後、都内のデザイン会社に入社
2001年よりフリーランス
MOOK、書籍、フライヤー等、多岐に渡り制作
増田詔子
グラフィック・デザイナー
1992年に女子美術短期大学を卒業後、都内のデザイン会社に入社
2010年よりフリーランス
エンターテインメント系雑誌をメインに制作
著者プロフィール
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Sayuri - 初等部・日本語国語教師 (日本)
CGKインターナショナルスクール初等部・国語教師。
Western Michigan大学大学院 Educational Technology学部にて修士号取得。
日本のICT教育や教育学部のカリキュラムを見直すため、専門分野の研究を行うかたわら、ドイツの出版社から研究論文の出版も。
Western Michigan大学にて2年の日本語指導と、ニューヨークの日本人学校にて5年の国語指導。