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プロデザイナーとのポスター制作プロジェクト - CGKインターナショナルスクール小学生の国語授業紹介

コラム 2024.09.29

今年のCGK School Festival 2024のポスター制作は、初等部4、5年生クラスの子供たちが担当しました。5年生が主導的な役割を果たし、デザイナーとの直接のやり取りから発注、完成までの全過程を担当しました。一方、4年生は来年に向けた準備として、自分たちのアイデアを形にする練習に取り組みました。

このプロジェクトには2つの狙いがありました。

  1. 子供たちに社会の仕組みをより深く知ってもらうこと
  2. プロの専門家と協力して質の高い成果物を作り上げる経験を提供すること

これは実社会での経済活動を模した取り組みであり、同時に職業体験の要素も含んでいます。

ポスター制作は以下の段階を経て進められました。

発注の概念理解

まず、子供たちは「発注とは何か」という基本的な概念から学び始めました。ポスターのターゲット層、School Festival開催の目的・理由、ポスターに掲載すべき情報についても深く話し合いました。この過程で、保護者、学校、学生、コミュニティなど、様々な視点からSchool Festivalの意義と宣伝ポスターの重要性について考察しました。

キャッチコピーの創作

次に、ポスターで伝えたいメッセージやCGK School Festivalの魅力を凝縮したキャッチコピーの作成に取り組みました。ターゲット層を意識しながら、魅力的な言葉やメッセージを組み合わせる作業は、子供たちの語彙力とコミュニケーション能力の向上にも大きく貢献しました。子供たちは言葉の力と影響力を実感し、創造性を存分に発揮しました。また、グループでのブレインストーミングを通じて、多様な視点の重要性にも気づきました。

このキャッチコピー作成の経験は、子供たちに広告やマーケティングの世界への興味を芽生えさせたようでした。さらに、自分たちの言葉でイベントの魅力を表現することで、CGK School Festivalへの愛着と誇りも一層深まりました。

発注依頼書の作成

キャッチコピー作成を通してポスターの方向性を決めた子供たちは、デザイナーとのミーティングに向けて、発注依頼書の作成に取りかかりました。

下記の内容を全てグループメンバーで話し合って決め、依頼書を完成させました。

  • ラフ案
  • テキスト原稿
  • 使用素材、写真
  • デザインイメージ

実際のビジネスプロセスを体験し、同時に専門用語も学びながら取り組みました。この過程を通じて、子供たちはチームワークの重要性を学ぶと共に、クリエイティブな思考力や意思決定能力を養いました。また、実際のビジネス現場で使用される発注依頼書の作成を通じて、プロジェクト管理の基礎も体験することができました。この経験は、将来の職業選択や起業への興味を喚起する貴重な機会となりました。

デザイナーとのミーティング(発注依頼・校正戻し)

発注依頼は、実際にデザイナーと会いながら、各グループのアイデアや方向性について直接プレゼンをしました。単に依頼書の内容を読み上げるだけでなく、わかりやすい言葉で理由や思いを伝えることを心がけました。プレゼン後は、プロの視点の意見を伺いながら、自分たちのアイデアが形になるよう多くの時間をかけて話し合いました。

デザイナーから4種類の初期デザイン案が提出された後、子供たちは2回目のミーティング(校正戻し)に向けて準備を行いました。インクルーシブな姿勢を保ち、子供たち自ら必要に応じて英訳をしながらその場にいる全員が内容を理解できているのかを確認して話し合いを進める姿勢も見受けられました

校正戻しのミーティングでは、子供たちはきめ細かく、様々な視点から修正点を提案し、丁寧に意見を述べました。修正版が次の日に早速届き、子供たちはプロの素早い制作ぶりに驚きつつ、自分たちのアイデアがポスターとして完成に近づいていることに大いに興奮している様子でした。

ミーティング中、一人の女の子が「下にグラデーションを入れるのがいいと思う」と主張しました。その場では実際のイメージがつかめなかったクラスメイトたちも、修正版を見て「グラデーションがある方がすばらしい!」と反応していました。最後まで子供たちが悩んだのはフォントでした。丸みのある柔らかな印象にするか、ゴシック体のような角ばった印象にするかを検討し続けました。全体の雰囲気、自分たちのキャッチフレーズ、ターゲット層など様々な要素を考慮した末、最終的に角ばった字体に決めました。このように一人一人の意見や想いが集まり、最終版が完成しました。

振り返り・配置場所の検討

このプロジェクトの振り返りでは、デザイナーから学んだことや、プロジェクトを通して感じたこと、完成したポスターへの思い、今後の挑戦したいことなどを、構成と段落に気をつけながら素直に書きまとめていきました。デザイナーへの感謝の気持ちを表したり、デザイナーを目指すためのスキルについて言及する子もいました。

また、子供たち自身がポスターを使って宣伝活動を行うことにもなりました。店舗に直接訪問し、ポスター掲示の協力を求める活動です。このプロジェクトはホームルームで行っているビジネスUOIとも関連しており、ポスター制作の目的を振り返るとともに「宣伝」の重要性を改めて学びました。

このプロジェクトを通じて、子供たちは情報収集と整理能力、レイアウトとデザイン思考、効果的な言葉選びと創作力、グループワークとコンセンサス形成能力、そしてプロとのコミュニケーション能力など、多岐にわたるスキルを向上させる貴重な機会を得た様子でした。

このように、「CGK School Festival 2024のポスター制作プロジェクト」は、単なる学校行事の準備にとどまらず、子供たちに実社会での経験と多様なスキルの習得機会を提供する、教育的価値の高い取り組みとなりました。 最終的に完成したポスターは、子供たちの創造性と実行力を存分に発揮した力作となり、学校と地域のつながりを深める役割を果たすことでしょう。

Sayuri

※このポスター(A2サイズ)チラシ(同デザイン/A4サイズ)の掲出にご協力頂ける企業・団体・個人の方がいらっしゃいましたら、ご連絡頂けますと幸いです。

理事長後記

    本プロジェクト実施の直前に、国語のSayuri先生から相談を受け、私(理事長:甲斐)のアイデアとして、プロデザイナーとの協働を提案させていただきました。普通であれば「子供たちが、自身のスキルの中で出来ることに一生懸命取り組み、自作のポスターを制作して終わり」となりそうなところです。もちろんその素晴らしさはありますし、そっちの方が、自分の作品に愛着がわくかもしれません。ですが、自作でのそういった経験はこれからの学校生活の中でいくらでもする機会がありますので、今回は、別の経験を重視してみることにしました。上のSayuri先生があげた「本プロジェクトの狙い」に説明を付け加える形で、今回私が何を重視したかったのかをお伝えさせて頂きます。以下、前置きが長いですが、最後までお読み頂けたら幸いです。

    本プロジェクトの狙い

  • 子供たちに社会の仕組みをより深く知ってもらうこと
  • プロの専門家と協力して質の高い成果物を作り上げる経験を提供すること
  • 人それぞれ得意不得意があります。社会は、お互いを補完するように支え合うことで成り立っています。自分の苦手なことを他人と比較することで悲観するよりも、人やその人の行動の優れたポジティブな側面を自他ともに着目してあげることが重要です。これは教育における重要な考え方です。

    日本における教育は、協調性という点においては他を尊重しますが、課題解決への取り組みにおいて、特に学校での取り組み方は、途端に個人戦であるように感じます。一人ひとりは勤勉に学んでいても、他者と深いディスカッションをして新たな気付きがあったり、自身の考えをアップデートして醸成するわけでもなく、総じてコミュニケーションスキルに欠ける印象です。それでも、孤独な個人戦が通用するのが、旧来の教育システムであり、評価システムです。

    それが社会に出ると180度変わります。自分の乏しく頼りない専門性だけでは、カバーできる範囲が狭く、質の高い成果が出せないことに気が付きます。旧来の学校教育では、それに気付く機会もありません。高い成果をあげるために必要なものの一例は、すでにあるリソースを利用することや、過去からの知見を最大限に活用すること、そして、他と協働して働くことです。そのためには応用するための思考力や実行力が必要ですし、コミュニケーション能力が必要となります。高い成果をあげる方法の一つに、その道のプロに頼るというのも、当然含まれているわけです。

    このポスター制作において、どういった方法が子供たちにとって一番達成感を感じられる方法だったかはわかりませんが、今回、プロのデザイナーと協働することで、自分たちが一生懸命思考してアイデアを出し、プロフェッショナルな人の力を借りることで、決して自分たちだけでは到達することのできない(少なくとも現時点では)、素晴らしい作品を作ることが出来たという感動を得ることができ、そのための一つの方法を学んだことになります。この経験は、これから人生や社会で課題に取り組む際の、選択肢を一つ増やした経験になったのではないでしょうか。他のリソースを利用するという選択肢に柔軟に気付けるようになったということです。

    テクノロジーの発展によって、知識の詰め込みだけでは、そして旧来の試験で良い点数を取るだけでは、全く無意味であることは明白です。AIを民間レベルで身近に利用できるようになった今、AIを活用しないという道があるでしょうか。今まで漠然と日本の古い教育に悲壮感を抱いていた方々も、よりその理由が明確になっているのではないでしょうか。育むべき人間力が育っておらず、明確な学習者像へ向けた全人教育がなされていません。「だから海外が良い」というのは短絡的ではありますが(海外も国や地域によって、そして学校によって様々なので)、グローバルな視点で常にアップデートしていくことは非常に重要です。CGKのようなまだ規模の大きくない学校は、これからの社会にとって、今いる子供たちが何をどう学んでいくべきかというのを真剣に考え、機動的に取り入れていけるのは、大きな特権です。国際バカロレアIBの導入もその一つでした。

    今回、プロのデザイナーさんにお願いしたこととして、「子供たちの理解レベルに合わせた言葉で伝える必要はありません。分からなければ子供たちは質問します。それよりも、デザイナーさんのプロフェッショナルな一面を見せて、子供たちに尊敬される人であってほしいです」とお伝えしました。IBで概念理解を大事にしているのと同じで、結局、将来にわたって記憶に残り、影響を残すのは、細かな枝葉の知識よりも、より根源的である概念や感覚、小さな感動です。眼前の試験を気にした教育では、重視されないポイントです。そういった点でも、一貫校であるCGKでは、理想の教育を追求していけるというアドバンテージがあります。

    今回、忘れてはならないのが、この一連のプロジェクトが「国語」という授業の中で行われたということです。「ポスター用のキャッチコピーを考える」という元のプロジェクト案から、国語以外の科目に発展しましたし、国語という範疇では決して掲げることがないような「狙い」を掲げてプロジェクトが進行されました。まさに、国際バカロレアIBのPYPが行う、教科横断的な特色が色濃く出ていたプロジェクトでした。

    特別なプロジェクトだったので、日本語が母語ではなく、普段は別で日本語授業を受けているJAL(Japanese as an additional language)の子供たちにも一緒に参加してもらいましたが、グループでのディスカッションになると、日本語話者の子たちも含め、みんなが急に英語で話し始めます。国語の授業でありながら、元々の「ポスター用のキャッチコピーを考える」という国語での目的に限定しない、とても象徴的なシーンでした。

    普段あまり授業を見学できていない私ですが、グループディスカッションの様子を見ていると、日々、多くのディスカッションを行ってきていることは明らかでした。闊達な意見交換や議論の進行とまとめが子供たちなりに行われ、グループによってはファシリテーターが自然発生し、効果的にディスカッションしている様子には、非常に感銘を受けました。

    与える側も受ける側も、教育の楽しさを実感できた、素晴らしいプロジェクトでした。この一連のプロジェクトの様子は、映像作品にまとめる予定ですので、どうぞお楽しみになさっててください。

    甲斐実

本プロジェクトにご協力いただいたプロデザイナー

鈴木章宏
グラフィック・デザイナー
1991年に日本デザイン専門学校(現 日本デザイン福祉専門学校)を卒業後、都内のデザイン会社に入社
2001年よりフリーランス
MOOK、書籍、フライヤー等、多岐に渡り制作

増田詔子
グラフィック・デザイナー
1992年に女子美術短期大学を卒業後、都内のデザイン会社に入社
2010年よりフリーランス
エンターテインメント系雑誌をメインに制作

著者プロフィール

Sayuri  -  初等部・日本語国語教師  (日本)JAPAN

CGKインターナショナルスクール初等部・国語教師。
Western Michigan大学大学院 Educational Technology学部にて修士号取得。
日本のICT教育や教育学部のカリキュラムを見直すため、専門分野の研究を行うかたわら、ドイツの出版社から研究論文の出版も。
Western Michigan大学にて2年の日本語指導と、ニューヨークの日本人学校にて5年の国語指導。

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