保育園での英語教育の効果は? ~将来を見据えた方針と計画~
近年、保育園や幼稚園でも英語教育を導入されているケースが増えていますが、その効果や意義については、保護者の方のみならず、導入を決めた施設側も認識していないケースが多いように思います。
今回の記事では、近年の保育園における英語教育導入や認可保育園の現状とプリスクールについても触れながら、幼児英語教育について考えてみたいと思います。
低年齢化が進む早期英語教育
ひと昔前では、中学1年生が英語学習のスタートで、みんなが横並びで英語学習を開始していました。そして、英語教育の熱の高まりと共に、ALT(外国語指導助手)の外国人の先生が英語指導のサポートとして学校の英語授業に参加するようになり、その後、遂に、英語授業(外国語活動)の開始が小学3年生まで引き下げられたのが2020年です。
この英語授業開始期の方針は、文部科学省が定めた学習指導要領に沿ったもので、各小学校の独自の判断による導入ではなく、いわば、国の規定に従ったものです。
一方で、民間の機関による英語教育サービスの利用は低年齢化が進み、幼児英語教育市場は大きく成長しています。
2013年度から2022年度にかけての推移を数字で見ていきましょう。
(単位:億円)
参考:
語学ビジネス市場に関する調査結果 2023(2022年度)|語学ビジネス市場に関する調査結果 2022(2021年度)|語学ビジネス市場に関する調査結果 2021(2020年度)|語学ビジネス市場に関する調査結果 2020(2019年度)|語学ビジネス市場に関する調査結果 2019(2018年度)|語学ビジネス市場に関する調査結果 2018(2017年度)|語学ビジネス市場に関する調査結果 2017(2016年度)|語学ビジネス市場に関する調査結果 2016(2015年度)|語学ビジネス市場に関する調査結果 2015(2014年度)
幼児英語教育関連の市場が伸びているにも関わらず、「幼児・子供向け外国語教室市場(プリスクール除く)」が縮小しているのは、英語力向上の効果が低いからでしょうか。一方で、英語力向上の効果が期待できる「プリスクール市場」は、新型コロナウイルスの影響を受けてか、一時的に成長が鈍化しているものの、今後も市場の拡大が期待されます。
日本では、子供の数の減少と反比例するかのように、子供一人当たりの教育費は大幅に増加していますので、効果の見込めない外国語教室よりも、保育料・授業料の高いプリスクール(英語保育園)に利用者が流れた可能性は大いにあります。
さらに、ノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・ヘックマン教授の研究結果によると、子供の教育への投資対効果が一番高いのは、小学校に入学する前の就学前教育とのことです。よって、幼少期の頃から、効果の望める教育であれば、積極的にお金をかけることを検討すべきだと言えるでしょう。
効果のある幼児英語教育は?
ここで、効果のある幼児英語教育について検証していきたいと思いますが、まず、保育園における英語教育の現状について、見ていきたいと思います。
保育園での英語教育の現状
日本の一般的な保育園というのは、認可保育園が中心(最近は、認可外保育園の一部である企業主導型保育施設も増えています)ですが、部分的に英語教育を取り入れている園は多いものの、かなり限定的にしか取り入れられていないのが現状です。
認可保育園においては、多額の運営費(および整備費)への補助金が国や自治体から支給されますが、認可保育園では独自に保育料を自由に設定できるわけではなく、また、保育料を保護者から受け取るわけでもありません。よって、認可保育園における売上は、基本的にこの補助金のみとなります(例外もあり)。そして、国または自治体によって定められた必要な保育士の数を満たすだけの保育士を配置した上で、保育士資格の無い職員を配置することが可能となります。
よって、認可保育園では、基本的には補助金が売上の上限であり、支出を抑えるしか、収益を増やす方法が無いということになります。特色を出し、英語教育を充実させる為に、外国人講師を採用したくても、売上向上には寄与することにならず、収益を減少させることにしかなりませんし、そもそも、いくら国や自治体からの多額の補助金が支給されるといっても、余分な外国人講師を多く採用できるほどではありません。
またこれは、英語保育園(プリスクール)で、認可保育園がほぼ存在しない理由でもあります。
そのため、プリスクールはほとんどが認可外保育園であり、認可保育園のプリスクールがあったとしても、実情は、外国人講師の比率が非常に少ないところが多いです。
このような状況ではありますので、認可保育園における英語教育は頻度も長さも短く、外部から派遣される講師による、英語レッスンやリトミックを時々実施される程度のところが中心。英語の習得には効果が乏しく、英語に慣れるという点でも、効果は限定的です。
英会話スクールの現状
子供向けの英会話スクールは非常に多く存在します。カリキュラムやプログラムは、各スクールが努力し、改良を重ねているとは思いますが、それでもやはり、実用的な英語力を養うという点では、非常に厳しいと言わざるを得ません。
これは子供に限らずですが、英会話スクールは、週に1回程度の通学ですので、英語習得に必要な時間の絶対量が足りませんし、教材を通しての学習では、生活に根付いた実践的な英語は身につきづらいです。英検クラス、文法クラスなどを用意していて、英語試験対策や、今後の進学・進級に備えての英語力アップという意味合いが強いところも多いです。
将来を見据えた英語習得目的と方針の設定
私達保護者もしっかりと考え、理解しておきたいのは、子供たちの将来も見据えた上での英語習得に対する目的と方針の設定です。
例えば、海外留学をし、その先の海外での活躍、というところまで明確に目的を設定されている方が多数ではないと思います。お子様が将来、自身でどういった未来を選択するかは、幼少期の段階で判断出来るわけではありませんし、英語がその子の将来にどの程度必要になるかも、確信が持てるわけではありません。
それでも保護者の役目として、お子様が将来、自身の人生を選択する上で、その選択肢が狭まってしまうことがないよう、できる限りの準備はしてあげたい。そのためにも「英語」というあくまで一つのスキル(ツール)ではありますが、英語の習得が将来の選択肢を大きく広げてくれるのは間違いありません。それは、仕事という観点だけでなはく、将来生活する場所、コミュニケーションする相手、情報入手元の言語、など多岐に渡って英語がいきてきます。
小学校から始まる英語授業に備えるためということであれば、保育園での月1回の英語レッスン、そして、週1回通う英会話スクールの意義は大きいかもしれません。ただ、将来をしっかりと見据えるのであれば、より英語教育に力を入れておくことは、メリットは大きくても、デメリットは少ないように思います。
一方で、英語というのはあくまで一つのスキルであって、幼少期に開始しなくても、ある程度のレベルまでであれば、習得が可能であることも間違いではありません(苦労しますが・・・)。そのため、先述の通り、早期英語教育の恩恵は非常に大きい一方、「英語教育」という観点のみを重視して、保育園・幼稚園選びをするべきか、という非常に重要な問題に直面します。
そこで、今までの話を総合しての理想的な選択肢の一つの提案としては、「英語教育はしっかりと力を入れ」ながらも、「非認知能力も含めた、幼児期に本当に必要な保育と教育を大事にして行う」英語保育園(プリスクール)です。
ここからは、このプリスクールという選択肢について見ていきましょう。
英語力と非認知能力を育む理想の英語保育園(プリスクール)
プリスクールというのは、上記の記事にもあります通り、英語で保育・教育を行う保育園や幼稚園のことで、年々その数は全国的に増加しています。
プリスクールにおいて、良質の英語教育と非認知能力を育む保育・教育の両方を提供しているかどうかは、スクールとしてどのようなシステムを採用するかが大事です。
週5日フルタイム固定であれば、量においても質においても、高いものを提供する土台があるといえます。一方で、英語力向上だけで良しとし、その他の部分におけるお子様の成長は家庭でサポートする、ということであれば、週5日ショートタイムであっても可能です。
ちなみに、著者である私が、横浜市中区で運営するCGKインターナショナルスクールにおいても、プリスクールを運営していますが、そこでは以下のような特色を持っています。
こういったプリスクールが、横浜だけでなく全国で増えていくよう、少しずつではありますが、コンサルサービスを通して、全国に増やしているところです。
おわりに
いかがでしたでしょうか。保育園における英語教育の現状については、意外な事実もあったのではないかと思います。
早期英語教育に対しての知見を少しでも深め、英語教育に対しての方針を決めて頂くことで、お子様のより良い将来のサポートへと繋がることを願っております。
著者プロフィール
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甲斐実 - CGKインターナショナルスクール創設者 (日本)
1984年生まれ。二児の父。
オーストラリア・カナダ・アメリカでの居住・滞在の後、広告代理店にて海外展示会業務と国内広告業務の兼務。
CGKインターナショナルスクール(横浜)においては、創設者としてゼロから起ち上げ、インターナショナルスクール経営コンサルも行う。