国際バカロレアIBにおける概念理解とは何か?
CGKインターナショナルスクールの初等部スクール長 兼 IB PYPコーディネーターであるDarby先生に、「国際バカロレアIBにおける概念理解」について、お話いただきました。
小学5、6年生の頃に学んだことを思い出してみてください。その教科や学んだ方法、現在もその情報やスキルをどのように活用しているのか、それがなぜ今も覚えているものなのかを考えてみてください。私と同じように感じる方も多いかと思いますが、心に残る主要な教訓は、学校で暗記した事実とは何の関係もありません。
私は成績の良い生徒でした。テストもよくでき、宿題にも楽しく取り組んでいました。私は学校が求める典型的な生徒で、静かに座り、手を挙げることを忘れず、期限内に課題をこなして提出することを怠らず、一般的に伝統的な学校教育の社会的規範を守るタイプでした。しかし、学校での学びを振り返ると、新しい情報をどのように使うか、それをどのような文脈に当てはめるか、そしてそれが自分に必要な情報かどうかをどのように理解するかということが、最も印象に残っています。
細胞分裂のすべての段階を覚えているわけではありません。ですが、通常の細胞分裂と生殖細胞分裂の違いは覚えています。ですので、新しいがん治療に関する情報や、私の髪の色が茶色なのに娘の髪の色がブロンドなのかという理由も理解できます。学生時代の国際バカロレアIBでの経験のおかげで、私は新しい情報を読み、出典(情報源)を調べ、様々な視点を検討・考慮し、その新しい情報を世界に関するより一般化された理解に置き換えることができます。IBカリキュラムの多くの側面が、私たちが大人になってからもこの世界をうまく生き抜いていくことを助けるスキルや理解に焦点を当てています。このカリキュラムの主な構成要素の一つは、概念理解に重点を置いていることです。
概念理解を重視するということは、事実や基本的な学習を無視するということではありません。学習している小さな事実や詳細を、重要な概念(キーコンセプト)を通じていかに文脈に当てはめるかです。歴史的な出来事について学ぶ際、名前や場所、日付を学ぶことは重要です。そうすることで、新しい情報を時間と場所の中で方向付けることができます。しかし、例えば第一次世界大戦についての学習で重要なことは、戦争中に起きた出来事の正確な時間と場所ではありません。重要なのは、各国が当時の出来事をどのように認識していたか、またそのような出来事に対してどのように対応した結果、紛争に至ったかというつながりを理解することです。このような概念は、現在の出来事や、それに対する私たちの対応次第で、現在の出来事がどこにつながっていくのかを理解するのに役立ちます。IB PYPでは、特徴、機能、変化、原因、関連、責任、視点を重要概念(キーコンセプト)としています。では、「概念」とは一体何なのでしょうか。
IBによると、「概念とは『大きな考え』、すなわち、普遍的な原理や観念であり、特定の起源、主題、場所、時代に制約されることはありません。概念は、広範で抽象的かつ、時代を超越した普遍的な考えを表します」と述べています(IBO、2018年、PYP: From principles into practice. p.48、翻訳)。したがって、これらの概念は、学校だけでなく、キャリアや日常生活で新しい情報を探し、利用・活用する必要がある時に、情報をどのように構造化するかということです。当校の1年生のUOIレッスンで生徒たちがニューロンの具体的な構造や機能について学ぶとき、彼らはニューロンに関連する形や語彙だけを学んでいるのではありません。生徒たちは、後に新しい情報を理解するのに役立つような方法で、関連、特徴、機能の全般について学んでいました。1年後に「dendrite/樹状突起」という言葉を覚えていないかもしれませんが、私たちの体には、脳が物体を掴むように指に命令するシステムがあることを忘れることはないでしょう。このように重要概念を理解することで、彼らが将来、後の生物学の授業でも、大人になって医学的な問題や解決策について読む時でも、新しい情報をよりよく吸収することが出来るようになるのです。
継続的な教育を見ても、実際にその基礎となるのは、学習の背後にある概念です。教育学修士課程で私が一番好きだった授業の一つは、カリキュラム・デザインでした。カリキュラム・デザインに対する様々なアプローチについて読み、カリキュラム・デザインの領域における様々な革新者について読み、何世紀にもわたって学校の目的がカリキュラム・デザインにどのような影響を与えてきたかという歴史について読みました。当時、没頭した読書の内容を今思い出せるでしょうか。私が完全に感銘を受けたお気に入りのカリキュラム・デザイナーの名前さえ思い出せるでしょうか。 いいえ。しかし、学校という機能がその形態にどのように影響したか、そして異なる文化的視点が学校の決定にどのように影響するかという、より広範な教訓は覚えています。これらの広範な概念理解は、カリキュラム・デザインの分野における新しい研究を分析し、私たちの家庭の文化やCGKのビジョンと使命を尊重する方法で、私たちの学校が最高の教育実践をどのように活用できるかを理解するのに役立っています。
ある意味、教育目標やゴールを、毎年学ぶべき事実や具体的なスキルのリストで、私たち大人が育った時代の用語で見る方がずっとシンプルです。親や先生が、用語のリストに注目し、生徒にそれを暗記させ、適切な時期に紙に書かせることは簡単にできます。しかし、そのような暗記は短命であり、私たちのいる世界や貢献している世界についてのより大きな、長期的な理解に貢献しない限り、ほとんど目的を果たしません。
概念理解を重視しても、生徒が割り算や段落の書き方を学ぶ必要性がなくなるわけではありません。また、歴史や政府がどのように発展し機能してきたかを学ぶことが重要でないということでもありません。むしろ、そのような事実やスキルを学ぶだけでなく、その知識を使って、現在私たちの社会の一部となっている情報過多に対応できる考え方を身につけることをサポートする枠組みを提供するものです。私たちは世界中のあらゆる情報をいつでも入手できる状態で歩き回っています。しかし、情報を理解するためのフレームワークがなければ、私たちの行動をサポートするという点で、その情報を使ってできることはほとんどありません。概念理解は学校では常に重要でしたが、後回しにされたり、行き当たりばったりで身につけられたりしていました。概念理解を意図的に行い、重要概念を中心に探究と学習を構成することで、国際感覚と21世紀型スキルの面で最良の成果を確保することができます。
著者プロフィール
-
Darby - 初中等部・スクール長 & IB PYPコーディネーター (アメリカ)
CGKインターナショナルスクール初等部・スクール長 兼 IB PYPコーディネーター。アメリカ・ニューヨーク出身。
自身も国際バカロレアIB DPの卒業生であり、30年以上にわたって、子どもたちへの教育とIB教育へ情熱を注ぐ。教育学修士号を取得。