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国際バカロレアIB UOIの国語(日本語)Vol.2 - CGKインターナショナルスクール小学生の授業紹介

コラム 2024.02.26

CGKインターナショナルスクール初等部の国語(日本語)の授業では、光村図書出版の国語教科書を全学年で使用しています。

前回、2年生の国語授業例をあげて当校の子どもたちが国際バカロレアIBプログラムのUOIにてどのように国語力を培っているのかを紹介しました。

今回は、1年生の国語授業でのUOIについてお伝えします。

  • 取り組んだ教科の枠を超えたテーマ:How the world works 世界はどのような仕組みになっているのか
  • 中心的アイデア(central idea):自動車の仕事やつくりは、環境や私達の生活によって進歩している

子どもたちは、

①車の仕事と構造(機能)
②車が開発されて変わってきた理由(変化)
③車が環境に与える影響(原因)

の流れで、探究学習を行いました。国語教科書単元『じどうしゃくらべ』の説明文読み取りや、説明文を書く活動も交えながら学習を進めました。

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※この説明文は、児童の身近にある3つの自動車を取り上げ、 「しごと」と「つくり」という二つの事柄の因果関係で述べる説明文です。「そのために」「~ように」などの理由や目的を表す言葉を使い、自動車の 「しごと」と「つくり」を関係づけて読み進める視点を持つように書かれています。


仕事と構造

教科書単元「じどうしゃくらべ」

キーコンセプト【機能】を意識した学習となりました。まず子どもたちは、車に関する図鑑や本を参考にしたり、既に知っている車を事例として、様々な車がどんな仕事をし、そのためにどんなつくりになっているのかについて話し合いました。

  • タクシーは、人を遠くまで行きたいところまで連れていってくれる。
  • ロードローラーは、前に大きなローラーが付いてる。
  • ショベルカーは、大きなスコップみたいなのがついていて、土とかを移動させたりする。

など様々な発見や知識を共有しました。

その都度、「そのために、どんなつくりになっていますか?」と繰り返し尋ねました。すると、子どもたちは、「そのために」という言葉を使いながら、答えることが自ずとできるようになりました。
その後、教科書を開いて読み進めた際は、各自が直ぐに「そのために」という大切な言葉を見つけることができ、3つの自動車の 「しごと」と「つくり」を関係づけて読み進めることが出来ていました。
わざわざ構造を読み解くために、ノートやワークシートに教科書の言葉を書き写す時間をとったり、板書された説明を聞く必要もありません

このように、自然な会話のやり取りを通して接続詞を無意識のうちに概念化し、様々な場面で使えるようになりました

振り返りとして、子ども達は好きな自動車を選び、その「しごと」と「つくり」について理解したことを書きまとめる活動を行いました。一人ひとりが、それぞれの車には仕事があり、そのために工夫されたつくりになっているということに気づくことが出来ていました。

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昔と今の比較

続いての授業では、子どもたちが調べた自動車を参考に下記のようなことをたずねました。

  • 昔からこれらの車はあったのでしょうか?
  • 昔と今の車は、何が、どう違うのでしょうか?

キーコンセプト【変化】を意識しながら既に知っていることや思いついた考えを共有し合い、学習を深めました。

そこで、学習内容に関連づけて日産ギャラリーへ校外学習に行くことにしました。


日産ギャラリー:校外学習

この校外学習の探究目的は以下です。

  • なぜ車の形や仕組みが発展してきたのか
  • どのように車の形や仕組みが発展してきたのか

現地では、スタッフの方がe-POWERとガソリン車の違いについてや、車の歴史、スポーツカーの仕組み、エンジンの仕組みなどについて多くの情報を提供してくれました。必死でメモをしたり、展示されている昔の車の模型を模写したりする子どもたちの様子がとても印象的で、スタッフの方もその真剣さに驚いていました。実際に車に乗ってみると、「こんなところに机の台がある!」や「車椅子の人が乗りやすいように後ろからスロープが出てくる!」など、新たな視点に気づく機会となりました。

また、外国語として日本語を学ぶ子ども(JAL/Japanese as an Additional Language)もこの校外学習に参加し、車の特徴や学んだことを作文に書きまとめました。

校外学習後の振り返りでは、子どもたちから「快適さ」「安全性」「環境」という言葉が自ずと出てきました。長旅でも誰もが楽しめたり疲れないような工夫、安全面を考えた構造、そして環境問題を考えて進化し続けている車の仕組みなどについて深く学ぶことができたようでした。
※ここでの学びが、後に子どもたちがデザインする「未来の車」のアイデア基盤となります。

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車と環境の関係

校外学習にて車の【変化】について学んだ子どもたちは、次にその【原因】を探究しました。車の排気ガスの排出量を減らすためにどんなことができるのか、について話し合いました。

既にホームルームのUOIにて、「地球温暖化」や「大気汚染」について英語で学んでいた子どもたちは、既習学習と関連づけながら、日本語でも車が及ぼす環境問題について考える機会となりました

校外学習で学んだ電気自動車やハイブリッド車のことに加えて、環境問題のために、水素やミドリムシの油を使って動く車が開発されていることを初めて知ることができました。

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未来の車のデザイン

最後に、探究のまとめとして、子どもたちはオリジナルの「未来の車」を発明する活動にとりかかりました。
「昔と今の比較」の学習にて気づいた「快適さ」「安全性」「環境」の視点を持ち、車の仕事と構造を考えながらデザインや文章でアイデアを表現しました。

今回のUOIでは、IB学習者像の知識のある人(Knowledgeable)考える人(Thinkers)探究のある人(Inquirers)を主に意識して子どもたちの学習をサポートしてきました。しかし、この未来の車を考える過程で、目や耳、手足に障害がある人や、小さな子どものことも考えた子どもたちは、思いやりのある人(Caring)の特性も自ずと実践することができる活動にもなりました。

下記に、子どもたちのアイデアを6つ紹介します。


【事例①】スーパーカー

未来のゴミ収集車を発明しました。そのゴミ収集車は、無人で電気を使って世界中を飛びながらゴミ収集に向かいます。町を通ると時間がかかるから空を通るそうです。
無人で動くので、ゴミ収集車の後ろにある2つの手がゴミを回収してくれます。無人にした理由は、「ゴミの袋を持つのが面倒そうだ。」と考えたからだそうです。
また、運転手を乗せていた席にもゴミやものをおくことができ、広々と車内スペースを使えるようになっています。これは、国語教科書「じどうしゃくらべ」に出てきたトラックの「荷台が広くて、たくさんの荷物を運ぶことができる」というつくりからヒントを得たそうです。
働く人のことを考える視点を持ったり、安全面・環境面から考案することができました。

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【事例②】12人乗れる車

12人乗っても車体を支えられるようにタイヤが8個ある「つくり」を考えました。目が見えない人や小さい子どものために、ドアを開けると段差がでてきて、そこには誘導用ブロックがついているというユニバーサルデザインの視点から発明しました。これは、障がいを持つ人々の建物へのアクセスと構造について英語で学んだUOIと紐づけて考えられました。
また、校外学習にて学んだ環境問題の観点から、水で動くことを推奨し、排出される水で地球を冷ますことを考案しました。
ウォーターサーバー、敷布団、キッチン、ものがたくさん入るトランクなど、大人数でもキャンピングカーのように快適に過ごすことができます。

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【事例③】お友達カー

環境面では、「ミドリムシは太陽の光を浴びると油がでるので、それで動かしています。」と理由を示す文章でアイデアを表現しました。
また、校外学習で学んだ電気自動車の車体の特徴を思い出し、そのためのつくりとして、フロントサイドには空気が通る穴をつけないデザインにしました。
安全面では、手話でも動くカーナビを使うと、伝えた場所に自動で向かってくれます。お年寄りや目の見えない人が安全に乗り降りできるように、点字ブロックをつける工夫もしました。
快適さの視点では、いい景色を見れるように大きな窓をつけたり、雨が降ってきた際は自動でワイパーが動いたり、テレビをつけたりなど、様々なアイデアを取り入れました。

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【事例④】なんでもできちゃうカー

環境面に気をつけて、水素とe-Powerの力で動く車を発明しました。「水素を使うとほとんど水しか出ません。」や「e-Powerを使うとe-Powerの電池が切れたらガソリンを使うけれど、その間にe-Powerが充電されます」と、しっかりと学んだことの説明文を書くことができました。

安全面では、

  • 絶対にパンクのしないタイヤ
  • 鉄や炭やダンボールなど様々な素材を使っているので壁にぶつかってもビクともしない車体
  • 雨が降るとセンサーが送られて自動で発動するワイパー
など、細部にまでこだわった「しくみ」を考案しました。

快適さでは、夏場に涼しい風が入ってくるように網のような素材が使われたり、前後に自動で動いてくれる椅子を取り入れたりしました。

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【事例⑤】地球カー

校外学習で学んだe-POWERの技術を使って、排気ガスを減らします。更に、車の上に庭や公園が広がっており、二酸化炭素を減らすことも目指します。
安全面では、泥棒に盗まれないようにスキャン機能がついています。また、お年寄りや赤ちゃんが快適かつ、安全に乗り続けられるように、ロボットが手伝いをしてくれるアイデアや、勝手にシートベルトが外れないようにする仕組みも取り入れました。

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【事例⑥】さにさ

潜水艦にもなるキャンピングカーを発明しました。身近にある、水陸両用バス「スカイダック横浜」を参考にしてアイデアをふくらますことができました。
仕事は、山で家族とはぐれた人の家族をみつけることです。
快適に過ごせるように、様々な家具やエレベーターも取り入れ、大好きなサッカーが安全にできるように「つくり」にも工夫をしました。
イラストに加えて、長さ・速さ・数も具体的な数字で表現し、読んでいる人がイメージを持ちやすい文章を書くことができました。更に、「鉄の棒があるから、安全です。」「タイヤがパンクをしてももう一つタイヤがあるから大丈夫です。」などと、理由を加えて論説文を書くことができました。

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その他、複数の子が取り入れていたのは、SUBARU社による「アイサイト」のアイデアでした。
安全面の視点から、車についているカメラにて危険時には車が自動に止まる仕組みを取りいれました。しかし、SUBARU社のアイデアを借りながらも、6個のカメラをつけて「ロイサイト」と名前を変える工夫をする子がいました。
上記の例以外にも、カメラが上についていて人の笑顔で自動で動く車(携帯電話のface IDのようなもの)や、ガソリンを水で薄めながらガソリンと水を一緒に使って排気ガスの排出を減らす車などのアイデアもありました。

このように、身近なものを思い出しながら、既存学習と紐づけて、創造性を刺激しながら様々な視点からオリジナルの未来の車を発明することができました。作品の発表時間では、ATL(学習のアプローチ)のコミュニケーションスキルの獲得も目指し、一人ひとりが質問に対して、聞き手にアイデアを納得してもらうために具体例を挙げるなどしながら、説得的に話すことができました。自信をもって発言する力やディベート力が垣間見えた発表活動となりました。

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振り返り

今回のUOIでは、知識のある人(Knowledgeable)、考える人(Thinkers)、探究する人(Inquirers)、思いやりのある人(Caring)の特性を実践することができる活動となりました。

また、ATL(学習のアプローチ)では、「社会性スキル」「思考スキル」「コミュニケーションスキル」「情報リテラシー」の獲得を目指しました。その結果、下記のようなことを達成できました。

  • 自分の学習を振り返る
  • 新しい視点をもって創造する
  • 知識、概念的理解、スキルを組み合わせて製品や解決策を創造する
  • 単元間や科目間のつながりを作る
  • 明確に、論理的に、敬意を持って意見を述べる
  • 積極的かつ敬意を持って相手の話に耳を傾ける
  • 説明文として理解しやすい形にアイデアや情報を整理する

さらに、1年生の国語科学習指導要領の評価基準として定められている下記のようなことも自ずと網羅することができるUOI活動となりました。

  • 相手に伝わるように、行動したことや経験したことに基づいて、話す事柄の順序を考えること。 (「構成の検討、考えの形成」イ)
  • 話し手が知らせたいことや自分が聞きたいことを落とさないように集中して聞き、話の内容を捉えて感想をもつこと。 (「構造と内容の把握」エ)
  • 語と語や文と文との続き方に注意しながら、内容のまとまりが分かるように書き表し方を工夫すること。 (「考えの形成、記述」ウ)
  • 文章の内容と自分の体験とを結び付けて、感想をもつこと。共有すること。 (「考えの形成」オ)
  • 長音、拗音、促音、撥音などの表記、助詞の「は」、「へ」及び「を」の使い方、句読点の打ち方、かぎ(「 」)の使い方を理解して文や文章の中で使うこと。また、平仮名及び片仮名を読み、書くとともに、片仮名で書く語の種類を知り、文や文章の中で使うこと。 (「知識及び技能」ウ)
  • 第1学年においては、別表の学年別漢字配当表(以下「学年別漢字配当表」という。)の第1学年に配当されている漢字を読み、漸次書き、文や文章の中で使うこと。 (「知識及び技能」エ)

このように、日本語の国語授業において子どもたちは、教科書の内容以上のものにまで視野を広げて既存学習やUOIと関連付けながら、「書く」「読む」「話す」「聞く」のスキルを培っています。

引き続き、子ども一人ひとりの興味や関心を活かしながら、教科書の学習だけに縛られない、かつ各学年で培うべき知識や技能(※)を確実に習得していける授業づくりを心がけていきます。

※CGKでの国語授業では、文部科学省が提示する小学校学習指導要領に基づいて、各学年の目標に達することを目指しカリキュラムを組んでいます。

著者プロフィール

Sayuri  -  初等部・日本語国語教師  (日本)JAPAN

CGKインターナショナルスクール初等部・国語教師。
Western Michigan大学大学院 Educational Technology学部にて修士号取得。
日本のICT教育や教育学部のカリキュラムを見直すため、専門分野の研究を行うかたわら、ドイツの出版社から研究論文の出版も。
Western Michigan大学にて2年の日本語指導と、ニューヨークの日本人学校にて5年の国語指導。

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