国際バカロレアIB PYPのUOI授業紹介(3歳児) - CGKインターナショナルスクール・プリスクール
3歳児にとっての国際バカロレア(IB)とは?
2023年4月よりCGKインターナショナルスクールでは、3歳児のJungle Bクラスを含め、各クラスで国際バカロレアプログラム(IBカリキュラム)を実施しています。IBプログラムは生徒主導の探究に重点を置いており、教室の内外で何を教え、何を学ぶかを生徒が導くことを可能にしています。Junble Bクラスでは、生徒たちが自分たちの世界を探究し、広げるために使える4つの探究の単位(UOI)がありました。 「私たちは誰なのか(Who We Are)」「私たちはどのように自分を表現するのか(How We Express Ourselves)」「世界はどのような仕組みになっているのか(How the World Works)」「私たちは自分たちをどう組織しているのか(How We Organize Ourselves)」です。「私たちはどのように自分を表現するのか(How We Express Ourselves)」は、1年を通して実施しました。
自己表現に遊びやアートが重要なのはなぜか
私たちは、幼い子供たちが自分自身を表現する最良の方法が、遊びやアートであることを知っています。それはまた、子供たちが学んだことや、すでに知っていることを示す方法でもあります。このIBのUOI(探究の単元)を通して、他のUOIとの間の学際的な相互作用を見ることができます。「私たちは誰なのか(Who We Are)」では、生徒は絵を描くことで家族の構成を共有することができます。「世界はどのような仕組みになっているのか(How the World Works)」では、動物や植物のおもちゃを使って様々な生態系を作ることができます。「私たちは自分たちをどう組織しているのか(How We Organize Ourselves)」では、農家やスーパーマーケットがどのように地域社会に食料を供給しているかを学ぶために、農家やスーパーマーケットの店員のふりをすることができます。
総括的評価(summative assessment)とは何か
IBカリキュラムでは、各生徒がどのように情報を吸収し、応用していくかを見るために、総括的評価があります。先日、Jungle Bクラスは「私たちはどのように自分を表現するのか(アートと遊びの探究)」の総括的評価を行いました。
年齢が上がるにつれて、クリティカルシンキング(批判的思考)と共感を促すには、チーム内で効果的に協力し、協働する経験を積むことが重要です。Jungle Bクラスでは、生徒たちに2~4人のグループで協力してアートギャラリーを作るよう求めました。個人で作業するのではなく、また、衝突を最小限に抑えるため、5人以上のグループも作らないことにしました。また、生徒自身がグループを決めるようにしました。これを3歳や4歳の子たちがするにはどうすればいいでしょうか。まず、基本的なルールを決める必要があります。
- 自分の持ち場に着いたら場所を変えないこと
各生徒がグループ内に留まるようにすることで、落ち着いて取り組める環境を作りたかったのです。そして、仮に活動に飽きた時にも「今何ができるか、何を工夫できるか」と考えてほしかったのです。 - 何かを追加する前に、パートナー達にOKかどうか確認すること
このように、私たちは総括的評価の中で生徒主導の主体性を促進しました。生徒には「そのアイデアは気に入らない」と言う権利がありましたし、何を望むかの交渉する機会も与えられました。新しいアイデアを出すことも、中途半端なアイデアを考えることも、元のアイデアをまったくやらないこともOKです。先生としては、先生たちの都合や考えではなく、会話を前向きに進展させるような方法でファシリテートするだけでした。最近は、生徒にもいい言葉を使うように促しています。「やめなさい!」と言うのは簡単ですが、協働している中では、相手を不快にしてしまいがちです。感情をコントロールする方法を学ぶために、平和的な交渉につながる、より素敵な言葉を使うよう求めています。 - タイマーが終了しても片付けないこと
全員が作品を完成させた後、Jungle Bクラスのアートギャラリーを散策し、感想を言ったり、全員の作品を見たりしてもらいました。こうすることで、生徒全員が自分の作品や他の生徒の作品をポジティブに振り返ることができる環境を作ることができます。 - 仲のいい友達がやっているからという理由で選ぶのではなく、自分が作りたいものを選ぶこと
時々、生徒が他の生徒から「プレッシャー」を感じ、自分の希望することをする代わりに、その友達を喜ばせるための選択をしてしまうのが見受けられます。ノーと言うことに苦労するようです。私たちは、おもちゃで遊ぶ代わりに色塗りをしたいと言う友達が、クレヨンで自由に色を塗れるように、このルールを設けました。これも、教室内で生徒の主体性を促進するための対策でした。
すべての基本的なルールが決まり、全員がそれに同意したところで、生徒たちにギャラリー作品の素材を粘土、クレヨン、切り貼り、おもちゃの4つから選んでもらいました。粘土のグループが2つ(2人と3人)、クレヨンのグループが1つ(4人)、おもちゃのグループが1つ(3人)、切り貼りのグループが1つ(3人)でした。
喧嘩することなく協力し合えるかを見るには、最初の目標としてグループ名を自分たちで話し合って考えてもらいました。ほとんどの生徒が基本的な名前をつけましたが、中にはもっと楽しい名前をつけた生徒達もいました。最終的には、
- Cut-Cut! (切り貼りのグループ)
- Clay Friends (粘土のグループ)
- Crayon Friends (クレヨンのグループ)
- Play Friends (おもちゃのグループ)
- Robot Friends (粘土のグループ #2)
子供たちは喧嘩することなくできました!そこで、総括的評価の次の部分、「導入」に移りました。ギャラリーの作品を作るのに、各グループに与えられた時間は40分です。
Cut-Cut! (切り貼りのグループ)
このグループは、画用紙とはさみとのりを使って、大きな白い紙の上に好きなものを作りました。まず、3DのVの字に見えるように紙片を貼っていきました。
生徒1: Ah! It’s like a tent. (あっ!テントみたいだね。)
生徒2: Yeah, it does look like a tent! (うん、テントみたい!)
先生: What else can you add to the tent? (このテントに他に何を足せるかな?)
生徒3: A camp! We can make a camp! (キャンプ!キャンプができるね!)
教師が探究心を刺激するような質問をするだけで、Cut-Cutチームはすぐにテーマを決め、残りの時間は画用紙でキャンプ場を作ることに没頭しました。
Clay Friends (粘土のグループ)
このグループは生徒が2人しかいなかったので、協力がしやすかったです。
生徒1: I’m making donuts! (私はドーナツを作ってるよ!)
生徒2: I’m making cookies! So Yummy. Here, Ms. Emily, try it! (私はクッキー!すごくおいしいから、エミリー先生、食べてみて!)
私(Emily): Oh, that is so yummy! What food are you making for the gallery? Is it a restaurant? (すごくおいしいね!ギャラリーのために何の食事を作っているの?これはレストラン?)
生徒1&2: No! (違うよ。)
私(Emily): Picnic? (ピクニック?)
生徒1&2: Yes! A picnic! Let’s make a picnic! (そう、ピクニック!ピクニックを作ろう!)
協力が上手な粘土グループの子たちも、すぐにテーマを決め、ピクニックのテーマに沿ったお菓子を作ることができました。
Crayon Friends (クレヨンのグループ)
このグループは4人で、最初は少し苦戦していました。A3の紙4枚がテープで貼られていたので、彼らは自分の紙にしか描けないと思い、アートギャラリーの具体的なテーマを考えていなかったようです。他の紙にも描いていいし、座らなくてもいいんだよと言うと、紙いっぱいに描いていました。ですが、もう少し交渉する必要がありました。
生徒1&2: Can we color here? (ここに色を塗ってもいい?)
生徒3: No, I don’t want you to. (だめ、塗らないでほしい。)
生徒4: But it’s everyone’s paper… (でも、みんなの紙だよ・・・)
生徒3: Can you draw in this spot instead? (代わりにここのとこだったらどう?)
生徒2: Okay! (いいよ!)
このような会話と交渉のスタイルは、素晴らしい作品を作りながらも、喧嘩をしないように皆が批判的(クリティカル)に考えるのに役立ちました。各生徒は、アートを通してそれぞれの個性を発揮しながらも、Jungleの仲間としてのつながりを示すことができました。
Play Friends (おもちゃのグループ)
当初、このチームはカプラだけでスタートしましたが、動物のおもちゃを追加することにしました。彼らのテーマは、カプラの塔で森を作ることでした!塔が倒れた後も、動物たちは森に入るためのチケットを手に入れ、順番を待たなければならないのだと笑い、ひとつの物語を作り上げました!スムーズに話ができ、交渉もしやすく、楽しみながらギャラリーを作ることができました。
Robot Friends (クレヨンのグループ #2)
3人の生徒からなるこのグループは、テーマを設定するのに少し苦労しました。最初は、全員が違うテーマを作り、それについて少し言い合っていました。
生徒1: I want to make Doraemon! (ドラえもんを作りたい!)
生徒2: I want Spiderman! (スパイダーマンがいい!)
生徒3: But I want to make Number Blocks… I don’t like Doraemon. (でも私はナンバーブロックスを作りたい・・・。ドラえもんは好きじゃない。)
私(Emily): I hear you want to make different characters. What theme can we do with that? (みんな違うキャラクターを作りたいんだね。じゃあどういったテーマだったらいいかな?)
生徒2: I don’t know… They’re all different. (わかんない・・・。みんな違うから。)
私(Emily): What about characters? Or something else completely? (じゃあ、「キャラクター」はどう?全然違うものでもいいし。)
生徒1: Characters! (キャラクター!)
最終的には、3歳児や4歳児がそうであるように、粘土でキャラクターを作ることに飽きてしまい、他のことをやりたがりました。そこで、プレイフレンズの昆虫のおもちゃを加えてみました。子供たちはみんな顔を輝かせ、この2つをミックスしました。
生徒2: I’m going to make Spider Sandwiches! (私はスパイダー・サンドイッチを作る!)
生徒1: Yucky! I’m going to make Cockroach Cookies! (気持ち悪い!私はごきぶりクッキー!)
生徒3: Spider Ice Cream! Hahaha! (スパイダー・アイスクリーム!ははは!)
そしてできた彼らのテーマは「昆虫食」です!何度も何度もアイデアを出し合った結果、難なく作ることができました。
そして・・・時間切れ!40分が経過し、各自、席に戻りました。
みんなのギャラリー作品の振り返り
次に、グループで教室を歩き回り、各グループが作ったものを見ました。感想を言ったり、気に入った点や面白いと思った点を話したり、各グループは自分たちが作ったものをクラスメートに披露することに誇りを感じていました。
総括的評価の最後には、アートや遊びを通して自分自身を表現する様々な方法について、そして1年を通して作った様々なおもちゃ、ゲーム、クラフトについて話しました。どんなおもちゃが好きで、どんなおもちゃが嫌いだったかを話し、Jungle Bクラスとしての1年間を懐かしく思い出しました。
著者プロフィール
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Emily - プリスクール・先生 (アメリカ)
CGKインターナショナルスクール・プリスクール5歳児クラスの教師。
国際学、日本語・日本文化専攻。